死ぬ前に書きやがれ

文章を書きたい30歳会社員。音楽とお笑いが好きなので主にその話。時々、感じた別のことも。

映画『あの頃。』は私ではなくあの人の物語。

「好きなことがあったら刺さると思いますよ」


そう勧められて映画『あの頃。』を見に行きました。松坂桃李主演のハロプロヲタクの映画。
先行きの見えない不安を抱えて生活する主人公が、松浦亜弥に魅了されて、ハロー!プロジェクトにハマっていき、同じくハロプロが好きな仲間に出会い、ヲタ活にのめり込んで青春を謳歌する…というストーリーです。


何を隠そうモー娘。ど真ん中世代の私。
私も例に漏れず、モー娘。どハマりでした。
ゴマキ〜6期加入までぐらいの期間かな。
私は加護ちゃん推しです。可愛い…!

ちょうど小学生だった私は、毎日学校で友達とモー娘。の話をして、放課後は駄菓子屋でモー娘。のブロマイドを買って、部屋にはポスター沢山貼って、加護ちゃんみたいな髪飾り付けて過ごしました。同世代なら、きっとそんな小学生時代の人達ばかりちゃうんかな。

今思うと、とても有難いことに小学生ながらモー娘。のライブも親に連れて行って貰っていました。ファンクラブに入って初めてとったチケットは大阪城ホール、まさかのアリーナ1列目。
至近距離のモー娘。を見たトキメキ。いやー、眩かったなあ。
最強のキラキラ軍団。モーニング娘。は圧倒的憧れでした。

と、私にも少なからずモー娘。との思い出がありまして。歳を重ねて、SMAP、お笑い、ロックと対象はどんどん変わっていったけど、何か好きなことを追いかける生活をずっと送ってきました。



きっと映画『あの頃。』の中には、私の生活にも通ずるところがあって。ちょっと懐かしんじゃったり、哀愁感じちゃったりしちゃうんだろうな。



そんな期待を胸に映画を鑑賞。
序盤、どん底の生活を送る主人公。ひょんなことから松浦亜弥の『♡桃色片想い♡』のMVを見て、ビビビと来てしまう。生きる希望を得た主人公の目に光が宿ったシーン。めちゃくちゃ良かった…!

そしてまたもやひょんなことから、ハロプロ好き有志によって開催されているイベントに足を運ぶ主人公。そしてひょんな流れで打ち上げに参加し、ひょんな流れでそのイベントに出演することになる。



…………ん?出演?




ここまでの流れが、めちゃくちゃ早いんですよ。超ノンストップ。え、出演してるよ。そして出演した瞬間に、思ってしまった。

「あ、これ私の話ではないわ」




主人公と仲間のハロプロ好き有志(後に恋愛研究会。と名前が付く)が出演していたのが、ライブシアターなんば白鯨。実際に存在する劇場です。
 
お笑いを好きになって、芸人さんのライブを観に、何回か白鯨に行ったことがあるんですけど、とても独特な雰囲気なんですよ。
アングラ(と言ってしまってええんかな)な劇場で、テレビやよしもとの劇場では観れないお笑いをしていたり、漫画や映画や音楽などの話が聴けたり。とにかく「ここでしか出せない」カルチャーが色濃く詰まった場所。

その場所で恋愛研究会。はハロプロ有志イベントを定期的に開催します。いつも一定数の集客を誇り、途中からハロプロ関係なく、恋愛研究会。のメンバーにファンが付いていないと成り立たないような企画も混じって来たりして。



とにかく、もう全然、私の話じゃない。笑

全然違うこちらの方はと言いますと、出生、進学、企業へ入社。そんな保険会社のパンフレットに載っているような人生を送っておりまして。

〇〇会社、〇〇部の〇〇です。
そんな肩書きを持つ人たちに囲まれて生活しているので、白鯨などのライブスペースに足を運んだ時、出演者さん達の肩書きにいつも興味を掻き立てられる。

〇〇研究家とか、〇〇コレクターとか。
(マツコの知らない世界に出てくる方々を想像して貰ったら分かりやすいんかな)
恋愛研究会。も、まさしくその人たちの事でした。



お笑いや音楽を好きになって、奇しくもそういう独自の肩書きを持っている方々を知って、「わー、なんて世界なんだ」と羨望の眼差しでその世界を覗き込むような気持ちで、白鯨とかのライブシーンに行っていました。


何故、その肩書きなのか
普段、どのように生計を立てているのか
一体、どうやって今のポジションにいるのか


何回聴いても、どうしてどうやってそこに辿り着いたのかいつも夢物語を聞いている気分になる。映画の中でもそこに至る経緯は全然描かれてないんですよね。白鯨をお客さんとして観に行った次のシーンで、主人公がもう出演側に回ってる。訳分からん。
でもただはっきりしているのは確固たる「好きなもの」がある方々たちばかりなんだよな。



映画の中の恋愛研究会。のメンバーの台詞。
「無職のオッサンばかりやで」

無職やけど、先行き見えないけど、同じ趣味の人同士で集まって、中学10年生のようなくだらなくも愛おしい日々を過ごす。そんな青春を謳歌する。

私は、きっと無職になるとがむしゃらに仕事探すよな、とここでも違いを痛感しました。
なんとかなるさ、という余白がない。

好きなことで生きる人は、危機を楽しんだり、余白を使うことが上手い人が多い気がします。
そんな人たちへの羨望から、企業に属する会社員しかできないコンプレックスを感じることもありました。
最近は保険会社パンフレット生活も、自分らしくて愛すべき人生だと思うようにもなってきましたが。
うんうん、分かるよ自分。
多分無職のままヲタク活動とかしたら、どうせ先行き不安で精神病むやろ?




この後続くストーリーでも、恋愛研究会。の面々の選択肢は、私の中には無いものばかりでした。

友達の彼女にそんなこと、絶対しない。
友達の危機にそんなこと、絶対しない。
そこは絶対茶化せない。
絶対、車に缶なんか投げない。笑

自分では絶対しない選択肢をどんどんしていく肩書:恋愛研究会。の面々に、笑いながら羨望の眼差しを向けて見終わりました。

私の生活にも通ずるかも、と期待して見始めた映画。実はモー娘。と同じように私が圧倒的に憧れた人たちの青春の話でした。
まじで共通点無かったな。笑




そしてエンドロールで知る事実。

原作: 劔 樹人

…ばちばちのカルチャーの人ぉ!!!!
そうか。そりゃ重ならんよ。笑

と思いつつも、剱さん=漫画家さん、プロデューサーさんで色々カルチャーを生み出す人という薄い認識しかなかったので、映画見終わった後に、剱さんのことを調べてみました。



Wikipedia情報で失礼します。

就職後、「恋愛研究会。」を立ち上げ、そのイベントにミドリを呼んだところ、当時ベースが不在だったミドリにベーシストとして誘われ加入。しかし、メジャーデビューを前に失踪、上京する。


メジャーデビュー前に失踪。
しかもミドリ!!!!!!
いや、やっぱり私なら出来ないわ。
すげーぜ、剱さん…笑



そして、さらに衝撃の事実が。


恋愛研究会。ロビさん=赤犬のロビンさん
恋愛研究会。イトウさん=赤犬のタカ・タカアキさん、をモデルとしているらしいです。

関西を中心に活動する赤犬というバンド。
スーツに身を包み、昭和の雰囲気を醸し出すムード歌謡を歌い出したかと思いきや、突如コーラス部隊ナイト・サパーズが客席に降り立ち、チークダンスタイムがあるバンドです。

赤犬を知らん方々からするの、何言ってるか分からんやろうけど、とにかくそういうバンドなんです。大好きです。ファンです。

恋愛研究会。のメンバーが、後の赤犬になるんだったら、もうこれは大納得ですよ。
拍手喝采。謎解きゲームの後のような素晴らしい爽快感までありました。

そりゃ共通点ないですよ。
だって私は、チークダンスを誘いに客席練り歩く側では無く、踊らされる側やもん。


これは「私」ではなく、思わず羨望を向けてしまう「あの人達」の物語を、覗き見する映画でした。
いや事前知識無さすぎて入り方、めっちゃ間違えてんで、というだけの話ですが、結果的に入り方めっちゃ間違えて見て良かったな。

赤犬エピソード0と認識したら、また全然感想変わりそう。そんな『あの頃。』鑑賞でした。